公論府設置法

条文草案 ―公論府設置法―(前文)
我らは、国政が日本国憲法の前文に著された手だて及び原理に従つて、真に国民の代表者によつて担はれることを切に望み、憲法の前文及び第十四条第一項、第十五条第三項及び第四項、第四十三条第一項、第四十四条但し書き、第五十一条、並びに第二十一条の求めるところ及びその精神を尊重し、国政にかかる原理が不当に歪められることがないようにするため、公論府の開設を請願した。

 

(提出理由)
一 そもそも国権の最高機関たる国会は国民の代表者によつて組織されなければならず、憲法はその保障を法の下の平等を定めている第十四条、成年者による普通選挙を保障している第十五条第三項、有権者の自由意思による投票を保障している同条第四項、両議院を構成する議員は全国民を代表するとしている第四十三条、選挙人及び国会議員の資格について差別することを禁じている第四十四条但し書きにおいて与えている。

この保障の下に主権者たる国民は、自らの代わりである代表者を通じて、国会を構成する両議院において自由意思によつて演説、討論及び表決することを保障されている。かかる手だては、国政が国民の厳粛な信託によるものであるために定められているのであつて、憲政の根幹であり、厳正に擁護され、実状がこの理念に即するようにしなければならない。

 

二 主権者たる国民が多様な言論を知る自由を保障するため、憲法第二十一条は言論、出版及び表現の自由を保障している。しかし、国民にもたらされる言論が報道機関の寡占等によつて制限され、国民が多様な言論を知ることができていないとすれば、実態において言論の自由が保障されているとは言えない。言論の自由を保障し、健全な国民世論が形成されるためには、国民が言論における自らの代表者を通じて公正な議論を行い、多様な言論が整理されて国民に提供されなければならない。

 

三 公共放送が公正に事実を伝え、多様な言論を知る自由を国民に保障し、国民による健全な世論の形成に資するようにするためには、その人事や予算に関する権限が権力から独立していなければならず、且つ、その健全な運営を確保し、その意義を損なわないようにするためには、国民の下に適切に運営されるようにしなければならない。

 

(目的及び任務)
第一条 公論府は、左各号に掲げる事項を達することを目的とし、選挙された公論議員により組織する。
一 日本国憲法第四十四条但し書きに従って被選挙権を保障すること
二 国会議員の候補者となる者を涵養すること
三 国会に対して多様性を補完すること
四 公論(道理にかなった公平な議論をいう)を興すこと
五 公共放送のもたらす公益を保全すること

第二条 公論府及び公論議員は、前条第四号のため、筋道を立てた公正な討論を重んじ、誤解を正し、論点を整理し、真実を追究し、討論及び調査について整理して国民に報告し、もって健全な世論の形成に資するものとする。
○2 公論議員は、前条第五号のため、日本放送協会経営委員の任免及び予算その他公共放送の運営に関する票決あたっては、公共放送の意義及び役割を十分理解し、その機能が損なわれることのないようにしなければならない。

 

(組織)
第三条 公論議員の任期は、二年とし、毎年半数を改選する。
○2 公論議員の定数は、一千三百五十とする。
○3 公論議員選挙の当選者は、翌年一月一日をもって公論議員に任ぜられる。
○4 公論議員及び予備議員の選挙に関する事項は、公論議員選挙法に定める。

第四条 公論府に予備議員を置く。
○2 予備議員の数は、規則により定める。但し、公論議員の定数の六分の一を超え、二分の一を超えない。
○3 予備議員の任期は、選挙の基準日から一年間とする。

第五条 公論議員及び予備議員は、その任に係る討論、発言及び表決については、府外で責任を問われず、又、いかなる差別待遇も受けない。
○2 公論議員は、公論府が四分の三以上の多数により不逮捕の決議をしたときは逮捕されず、又、現に拘束されているときは速やかに、かつ安全に釈放される。

 

(会議及び活動)
第六条 通常会の会議日は、毎年二百二十五日とする。
○2 会議日の日程は、年始から六月の総会までの日程は前年十二月の総会の際に翌年の公論議員が集って、年末までの日程は六月の総会において議決して定める。
○3 公論議員選挙の投票日の前八日間は、会議日とすることができない。
○4 当直理事は、通常会の議事を整理し、会議の秩序を保持する。
○5 当直理事は三名とし、公論議員が会議日毎に輪番により務める。
○6 当直理事の参集に係る費用は、予算に計上する。

第七条 総会は、毎年二回、六月及び十二月に九日間の日程で催す。
○2 参集に係る費用(前条第二項に係る費用を含む)は、予算に計上する。
○3 総会は、会議その他の手続及び内部の規律等に関し、総議員(予備議員を含まない。以下同じ)の過半数により、規則を制定又は改正することができ、総議員の四分の三以上の多数により、特別規則を制定又は改正することができる。
○4 総会は、総議員の五分の四以上の多数により、甚だしい怠慢、又は秩序を乱す行為を繰り返し、若しくは選挙の不正、又は禁錮以上の罪に処させる罪を犯す等、特別規則の定める事由のある公論議員又は予備議員を除名することができる。
○5 総会の議事は、毎部を二時間程度とし、各部を九名の担当理事が整理する。

第八条 公論議員は、その在任中、政治活動にかまけて会議を疎かにしてはならない。
○2 公論議員は、やむを得ない事由による場合を除いては、総会を欠席できない。

第九条 通常会は、特別規則の定めるところにより、公論を処理することができる。
○2 公論議員は、通常会又は総会の議決により、調査会を催すことができる。

第十条 公論府は、通常会又は総会の議決により、内閣に対し、又は衆議院若しくは参議院に対しては議員の紹介によらず、請願し、又は、質問書を送付し、議院の委員会及び調査会並びに合同審査会に意見書を送付することができる。
○2 各議院は、公論府が調査会において調査し、総議員の過半数が会議に付することを要求した請願は、要求の日から休会中の期間を除き三十日以内に会議に付さなければならない。
○3 内閣は、公論府が調査会において調査し、総議員の過半数により議決した請願については、議院から送付された請願と同様に処理し、調査会が要求し、総議員の過半数により議決した質問書については、送付された日から十四日以内、国会の会期にかかるときは三十日以内に答弁書を送付する。
○4 公論府が総議員の過半数により、公聴会又は公論府が行った請願を審査する委員会において公論議員に公述又は答弁させることを求める議決をしたときは、各議院の委員会又は調査会は、議院の議決によらない限り、これを拒むことができない。
○5 公述又は答弁すべき公論議員は、公論府の議決により指名する。
○6 意見書は、送付された議院の委員会及び調査会並びに合同審査会の会議録に添付し、議員に配布される。

 

(予算及び歳費)
第十一条 公論府の通常の経費は、国会に関する予算(国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第三十二条の規定により計上される衆議院及び参議院の予算と政党助成法(平成六年法律第五号)により交付される政党交付金の合計)の十分の一を目安として、独立して国の予算に計上する。但し、国民経済計算の市場価格表示による国民所得の十万分の四と比べて百分の八十を下らず、百分の百二十を超えない。

第十二条 前条により計上する予算は、左に掲げる目的に従って区分して計上する。
イ 歳費等(第十三条、第十六条、第十七条に関する経費)
ロ 運営費(第二十三条、第六条第六項、第七条第二項、本条第四項及び第六項並びに施設に関する経費)
ハ 選挙の執行に関する経費
○2 前項のロ及びハは、それぞれ前条目安の四分の一の額を目安として計上する。
○3 前条により計上される予算に加えて、選挙の執行に関する経費の予備費として、国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律(昭和二十五年法律第百七十九号)に従って当該予算年度の前々年度の前十年間に国が負担した選挙の執行経費の毎年の平均額の十分の一に相当する額を計上する。
○4 通常の経費に関する予備費は、特別規則の定めるところにより支出される。
○5 調査会に予算を支出するには、総議員の四分の三以上の同意を必要とする。
○6 施設の整備等に関する基金に関する事項は、特別規則により定める。

第十三条 公論議員は、基本額十五万円に再選された議員にあっては歳費の級数に基本額の六分の一を乗じて得た額を加えた額の歳費月額を受け、歳費月額に二を乗じて得た額を六月と十二月にそれぞれ受ける。
○2 歳費の級数の値は、初めて再選されたときを二として、公論議員を二年間務める毎に一を加えた値とする。但し、前項の計算においては六を限度とする。
○3 予備議員は、基本額の三分の二に相当する額の手当を毎月支給される。
○4 基本額は、第二項により歳費の上限となる額が短時間労働者を除く給与所得者が受ける給与額の平均から乖離しないように、時宜に改められるものとする。

第十四条 公論議員は、兼業をし、又は学生を兼ねることができない。
○2 前項の規定は、公論府の目的及び任務に関連する講演、著述、言論により収入を得ること等を、特別規則により認めることを妨げるものではない。但し、その収入額の二分の一に相当する額を歳費から減ずる。
○3 予備議員は、学生を兼ねることができない。他に相当額の収入があるときは、特別規則の定めるところにより手当を減ぜられ、活動費の支給を制限される。

第十五条 公論議員及び手当を受ける予備議員の資産及び収入は、公開する。
○2 前項について必要な事項は、政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律(平成四年法律第百号)に準じて、特別規則により定める。但し、同法第二条第四号の資産等の区分は預金及び貯金と読み替え、第五号にある額面金額は四月一日時点の時価による総額と読み替える。

第十六条 公論議員選挙の当選者で収入がない者は、基準日より三ヶ月間は、予備議員の手当に相当する額の当選者手当を毎月支給される。

第十七条 公論議員及び予備議員は、毎年二回、活動費を支給される。
○2 前項により支給される活動費は、公論議員にあっては年間六十万円を、予備議員にあっては年間三十万円を超えない。
○3 活動費は、第一条の目的に沿った活動のために用することを主たる目的とし、且つ、左に掲げる費用に限って使用することができる。
イ 交通又は宿泊、会合及び宿舎等の利用に要する費用
ロ 情報通信及び翻訳等のサービスの利用に要する費用
ハ 新聞、図書及び放送等の購読、閲覧、視聴に要する費用
ニ コンピューター、録画機、印刷機等の機材に要する費用
ホ 公演又は研修等の分担金、その他特別規則の定める費用
○4 要件及び自己負担の基準その他の事項は規則により定める。
○5 公論議員又は予備議員の候補者となる前一年以内に支出された費用は、第二項に掲げる額の二分の一を限度として、遡及して活動費を使用することができる。
○6 活動費の使途及びその金額は、年に三万円以内を除いて全て公開する。
○7 活動費により取得した物品等の売却益は、活動費に戻さなければならない。
○8 支給後二年を経過して使用されていない活動費は、公論府の予備費とする。

 

(公論議員の特例)
第十八条 公論議員の政治資金団体は、政治資金規正法(昭和二十三年法律第百九十四号)第十九条の七に定める国会議員関係政治団体とする。但し、同法第十九条の十三に定める政治資金監査は、事務局がこれを行うものとする。

第十九条 再選されている公論議員が衆議院議員又は参議院議員の候補者となるときは、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第九十二条の求める供託を必要としない。
○2 前項規定により供託をせずに選挙区に立候補した公論議員については、歳費について各号を適用する。
イ 得票数が投票総数の二十分の一に満たなかった者は、次の任期とその次の任期では、歳費の級数の値を本来の値から一を減じた値とする。
ロ 任期の始まる前十年以内に国会議員の選挙で落選した回数に本来の歳費の級数を乗じて得た値に、基本額の百分の一を乗じて得た額を歳費月額から減ずる。

 

(事務局)
第二十条 公論府に事務局を置く。

第二十一条 事務局に事務局長及び事務局次長を置く。
○2 事務局長は、衆議院又は参議院の事務総長、事務次長、法制局長、若しくは衆議院調査局調査局長の経歴を有する者の中から、特別規則の定めるところにより総会において協議し、総議員の過半数の同意により任命される。
○3 事務局長は、総会の度に総議員の四分の三以上による信任を必要とする。
○4 事務局次長は、職員の中から事務局長が指名し、事務局長の職務を助ける。
○5 事務局次長は、総議員の過半数が罷免に同意したときは、罷免される。
○6 事務局長が欠けたときは、事務局次長が事務局長の職務を代行する。
○7 事務局長及び事務局次長が共に欠けたときは、規則が定めるところにより、幹部職にある者の中から事務局長の職務を臨時に代行する者をくじにより選任する。

第二十二条 事務局に参事及び職員を置く。
○2 参事及び職員は、事務局長の監督の下、左に掲げる事務を処理する。
イ 会議の補助及び調査研究に関する事務
ロ 情報通信及び議事の記録等に関する事務
ハ 予算の執行及び第十八条に基づく監査等に関する事務
ニ 施設の管理及び庶務その他の一般事務
○3 参事及び職員の員数は、公論議員の定数の五分の一を超えない。

第二十三条 事務局長は、十二月に公論議員及び翌年の公論議員が集って議決した事項に従って、翌会計年度の歳入、歳出、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為の見積に関する書類を作製し、これを内閣における予算の統合調整に供するため、内閣に送付しなければならない。
○2 事務局の予算は、公論議員及び予備議員の歳費、手当及び活動費の予算に優先して計上される。

第二十四条 事務局は衆参両院の事務局、法制局、衆議院の調査局、及び国立国会図書館に対して職員の派遣を求めることができる。

第二十五条 その他の事務局及び職員に関して必要な事項は、なるべく議院事務局法(昭和二十二年法律第八十三号)及び国会職員法(昭和二十二年法律第八十五号)その他の関係法規に倣って、特別規則により定める。
○2 国会職員法第四十五条の規定は、公論府の事務局の職員について準用する。

 

(雑則)
第二十六条 日本国籍を有しない公論議員は、事務局長の任命及び信任、並びに事務局次長の罷免については、議決に参加することができない。

第二十七条 国会は、この法律又は公論議員選挙法を改正するにあたっては、委員会に審査を付する前に、公論府に意見を求めなければならない。

第二十八条 この法律の施行後、事務局が発足するまでの間は、事務局の処理すべき事務は国立国会図書館が代行する。この場合において、国立国会図書館の館長又はその職務を行う副館長は、事務局長の職務を代行する。
○2 前項の場合において、第二十四条の規定は国立国会図書館に準用する。

第二十九条 公論議員選挙の執行にかかる経費が第十二条第三項による予備費を使用しても十分に賄えないときは、他に区分して計上された予算を使用することができる。但し、その状況が続き、解消される見込みがないときは、国会は選挙の執行を二年に一度とするための立法を行わなければならない。この場合において、公論議員の任期を一時的に一年間延長し、予備議員の任期を二年とする。

 

 

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