多様で開かれた言論

言論の自由

憲法は思想良心の自由を保障するばかりではなく、第二十一条では言論の自由を保障しています。言論には「受け手」があり、その自由は検閲の禁止と共に、国民が多様な言論を受け取れるようにすることによって、健全な世論が形成されるようにするための権利であると言えます。


第四の権力

しかし、マスメディアの大きな影響力は、それ以外の言論を独り言にしてしまいます。言論が伝わる範囲、受け手の数にはメディアによって大きな格差があり、新聞やテレビに扱われない言論が世論に影響を及ぼすことはまずありません。


そのため、有権者の投票行動に影響を及ぼすマスメディアは第四の権力とも呼ばれています。第四の権力は他の権力と比べて劣るどころか、場合によっては故意か否かにかかわらず、世論を操り、有権者を通じて他の三権を支配することもできてしまいます。


マスメディアを通じて多様な言論を受け取ることができていれば良いのですが、特に影響力が大きい地上波テレビ放送では、各局の論調や取り上げ方が似通っていることがあります。そのため、国民は偏った言論のみを受け取り、それを投票行動に反映させてしまうおそれがあります。


不自由な言論

書籍などの有料の言論は議論を分断したり、しばしば商業的な目的で刺激的な内容に誇張されたりすることがあります。インターネットを通じた言論は自由に見えますが、マスメディアや有料の言論の影響を強く受けてしまいます。また、実際には優良な言論が拡散されることを期待することは難しく、影響力も大きくはありません。むしろ排他的なコミュニティが形成されたり、刺激的な表現が拡散されたりする傾向が見られます。


公論を興す

「公論」には、輿論(よろん、世論)の意味のほか、道理にかなった公平な議論という意味があります。公論府は議事を通して、言論を整理する作業を行うことになります。


この整理とは、それぞれの言論が存在することを認めて、討論や調査を通じて類似する言論との違いを定義し、反論や修正などを加えて、公論として多様性を体系化するプロセスです。


条文草案では、「筋道を立てた公正な討論を重んじ、誤解を正し、論点を整理し、真実を追究し、討論及び調査について整理して国民に報告し、もって健全な世論の形成に資する」ことを公論府と公論議員の任務として規定しています。


健全な世論

世論は、報道や政治宣伝の影響を受けやすく、十分な理解に基づいているとも言えません。そのため、討論型世論調査も注目されています。世論調査の対象に情報を与え、討論を経させることで、自由な意思形成を導く試みです。


健全な世論が形成されるためには、有権者が多様で開かれた言論を受け取ることができる仕組みが必要です。多様な言論が整理されて国民に公開されることは、健全な世論の形成を助けることになります。


健全な放送を助ける

放送法は編集について「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を規定しています。しかし、意見の対立を示す仕組みがなければ、この規定に沿って編集されることを期待することはできません。整理された公論は、放送事業者がこの規定に沿って編集を行うときの助けになります。